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When I'm hanging out with you,It's the best time.

松村北斗さんと「黒」

最初はあまりに尖っていて、一体どんな17歳なのかと思った。

その当時、高校生で時間も有り余っていた私はドラマをよく見ていた。

そんな中、彼は鮮やかに現れた。

「黒の女教師」というドラマを見ていた時だ。

彼を表す言葉として浮かぶのは、怪しい、危ない、暗い、そして黒い。

黒の女教師という「黒」を背負ったドラマに出てきた、黒い少年。

主演を務める榮倉奈々さんがその当時持っている色としては白や黄色といった明るい色のイメージの方が強かったため、余計に彼が内側から放つ黒色が強く見えた。

そんな印象的で、多分あのドラマを見ていた者、ほとんどの目を奪ったであろう少年は、行動でも度肝を抜いていった。

他の作品では見たこともない少年が、気づけば主演・榮倉奈々さんの唇を奪っているのだ。

それから私の中で彼の印象は、黒くてミステリアスで危うげなのに動じない、強烈な少年。

それが松村北斗という方に対して抱いた鮮烈なファーストインプレッションだった。

 

 

それから約8年後、私はようやくSixTONESというグループをしっかり知ることになった。

 

そこで自ら友達が2人だとご披露し、黒いファージャケットという6人の中でも一際豪奢な衣装にも関わらず、佇まいに全く堂々としたところのない、不思議な雰囲気を纏っている人の前に「松村北斗」というテロップが出ていることに気づく。

ま、松村北斗ってあの...?黒の女教師の...?

記憶が蘇り繋がった瞬間である。

 

彼が今までやってきた作品をちゃんと見たのは黒の女教師が最初で最後だった。

他にどんな役をやっていたのかはなんとなくしか知らない。

彼が本当はどういう人間かも知らない。

ただ、彼が8年前に放っていた黒という色は息を潜めているように感じた。

メンバーカラーは黒だというし、確かに黒色の服はよく似合うのだけれど。

あの頃の、屈折したブラックホールでも内包していそうな尖った彼の面影はもう感じとれなかった。

 

 

「黒の女教師」以来、初めて彼のお芝居を見た。

「一億円のさようなら」だ。

 

黒の中に浮かび上がる主要人物たちの顔。

そんなポスターの中に彼もいた。

やはり黒がよく似合うと思ったし、黒に縁のある人なのだとも思った。

「黒の女教師」作中で彼が放っていた色は間違いなく黒だったし、黒を放つことが期待された役だったように思う。

今回の若かりし鉄平はどうなのか。

黒く染まりかけている心のうちに在る白く煌く夏代との思い出。

現在の鉄平が黒く染めたくない、だけども染めるしかないかもしれないと苦悩する、まだ黒く染まりきっていない淡く柔らかい部分だ。

 

1話を見た。

あまりにも現実的、リアルでないのは夏代が持つという莫大な遺産だけ。

そんな世界が、上川さんが演じられる現代の鉄平の世界だとしたら、若き鉄平と夏代の世界は少女漫画のようだ。

とにかく白く眩い。

感じるのは、真面目さ、純真さ、未来への希望。

そして夏代の不倫から漂う黒が少し混ざり始めている。

少女漫画のようにキラキラとした世界から、リアルすぎて寒気がする現代の鉄平への橋渡し。

いつまでも白でいるのか、どこかで黒に染まるのか。

今はまだ分からないけれど、苦手な営業にも汗水垂らして食らいつき、気になる女の子の嫌なところから目を背けず向かい合い、心の奥底から綺麗で無垢な白を放つ松村北斗さんがいたことは確かだった。

 

 

無色透明のような俳優の方もきっと大勢いるのだろうし、特筆すべきことではないかもしれない。

ただ、松村さんが8年前に放っていたどこか危うげな黒が、彼が生来持って生まれた色だと思っていた私には衝撃だった。

「一億円のさようなら」第1話で見えていた白はとても眩しかった。

実は彼本来の色なのかもしれないし、彼の演技の賜物なのかもしれないし、どちらなのか断定する気も全くないけれど。

彼はこんなに純真な演技をされる方だったのか、と。

 

出来ることなら、8年前の自分に知らせてあげたい。

8年前に知っていたら、きっとこの8年の間の彼の演技を余すことなく見たはずだろうから。

 

あの日に見た鮮烈な黒を忘れられなかった。

今日見た白くて眩しい輝きも忘れられないんだろう、きっと。

 

これからもこの人の演技を強く焼き付けていきたい。

そう思わされた一人の感想をここに書き置いておきます。

 

珀 

 

(P.S. 「黒の女教師」というドラマを成人してから見返したこともないので、シンプルにその時抱いたイメージだけで記載しております。ご容赦ください。)